【上の写真をクリックすると機体各部の詳細、この機体での実写例をご覧いただけます。】
■スペック
【カメラ・ボディ】
○モデル: ツアイス・イコン社 Contax-S (Type D-2)
○生産国 (生産年): 旧東ドイツ (1951年頃)
○形式: 35mm フォーカルプレーン式一眼レフ
○シャッター速度: B, 1/1-1/1000
○レンズマウント: M42
○サイズ: 146 x 85 x 55 mm
○重量: 550g
【レンズ】
○標準レンズ: Carl Zeiss Jena Biotar F2/58mm
(M42マウント、プリセットタイプ)
【付属品】
○カメラケース: 純正 専用本革製
○マニュアル: Contax D用 CD判(英文、JPEGファイル)
■解説
戦後まもなくの1951年、VEB Zeiss Ikon社によって開発された伝説の一眼レフ、Contax S です。
組み合わせるレンズには、定番のカール・ツァイス・イエナのビオター・58ミリF2をチョイスしました。
第二次世界大戦の終結後、敗戦国ドイツはヤルタ協定に基づいて東西の陣営に分割統治され、1949年には東西各ドイツが誕生します。大ツァイスもこれに伴い二分割されることになり、東ドイツに組み入れられたVEB Zeiss Ikon社(後のVEB Pentacon)が、分割後はじめて発表したカメラがこのコンタックスSです。
コンタックスSは、世界初となるプリズム・ファインダーを搭載した一眼レフカメラです。それまでの一眼レフの欠点とされていたファインダー像の問題(左右逆像、横位置のみの撮影など)を解決した画期的カメラとして、戦後直ぐのカメラ市場に大きな驚きをもって迎えられました。
また同時に、一眼レフ・コンタックスSの登場は、その後の世界のカメラ市場ニーズやカメラ開発の方向性を決定づける大きな契機になったとも云われています。このコンタックスSに刺激を受けた日本の各メーカーは、ペンタックスAPやニコンFをはじめ次々と新型機を発売し、やがては日本の一眼レフ機が世界市場を席巻していく歴史は皆さんご承知の通りです。
このようにカメラ開発史に名を残すコンタックスSですが、レンジファインダー機・RFコンタックス(Contax I/II/III)と比べると、日本においては意外なほどこの一眼レフ・コンタックスの存在は知られていません。(東ドイツ・ツアイス発ということが日本では馴染みが薄い原因なのかも知れません。)
コンタックスSのペンタプリズム部のスタイルは、世界ではじめて搭載されたとは思えないくらいデザイン的に洗練されていて、ペンタ部分の出っ張り具合は現代の一眼レフのデザインをも凌ぐ優れたものです。
また、シャッタースピードは、高速部と低速部が別々の構造となっていますが、これを『梅花型』のシャッター窓(これが実に愛らしい!)にうまく一つにまとめる処理がなされています。また、各パートのつくりやメカ機能は、当時の最高級一眼レフの名に恥じない、大変グレードの高いものです。
一眼レフ・コンタックスは、その後、東西ツァイス間の商標権を巡るあの長い長い裁判の結果、コンタックスからペンタコン(Pentacon)に名を変えて生産を続けることになります。モデル名は、初代がS、その後、D、E、F、FB、FM、FBMと変遷していきます。(このうちいくつかのバリエーションをこちらで見ることができます。ご興味のある方はどうぞ。)
写真掲載の機体は、記念すべき初代Sモデルです。(ペンタ部に彫られている”D”の小さな文字は、Dモデルを指すのではなく、Sモデルのタイプ種別を示します。二代目のDモデルは、大きな文字で”Contax D”と表示されます。)
付属するレンズは、カール・ツアイス・イエナの定番標準レンズ・ビオター58ミリF2です。赤いTマークが付く、ツアイス独自のコーティング処理された有名レンズです。
一眼レフ・コンタックスSは、レンズマウントはM42ですので、交換レンズの選択肢は豊富です。しかも、現在中古カメラ市場では、大変リーズナブルな価格で内外の著名レンズが入手可能です。
このビオター58ミリ標準レンズをベースに、豊富な交換レンズ群の中から、少しずつお好みのレンズを集めていくのも今後の大きな楽しみの一つとなるでしょう。