自分にとってのクラカメの原点、すべての基準
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■スペック
【主な仕様】
○モデル : イーストマン・コダック社 レチナ I (010型)
○生産国 (生産年) : ドイツ (1946-1949年)
○形式 : 35mm Folding Camera
○レンズ : Kodak Ektar f=3.5 50mm. Made in U.S.A.
○シャッター : COMPUR-RAPID B, 1/1 – 1/500
○内蔵距離計 : なし
○内蔵露出計 : なし
○サイズ : 120 x 75 x 35 mm
○重量 : 435g
【付属品】
○カメラケース: 専用革ケース
■解説
『私の選んだクラカメBEST10』第3位は、Retina I (#10)、エクターUSAレンズ付きです。
多分、クラカメファンの多くの方々からは、『何ですかそれ?』とういう反応が返ってきそうですね。
たしかに無理はありません。Retinaというカメラの名前は知っていたとしても、一般には「大衆向けの昔のスプリングカメラ」という程度の認識が一般的でしょうから。
レチナは私にとって初めて買ったクラカメですし、このカメラを通じてクラカメの深淵にのめり込んでいったので、人一倍強い思い入れがあります。
しかし、このような個人的な事情を脇に置いたとしても、客観的に見て、レチナは立派にカメラ史に名を残すだけの偉業を打ち立てたと評価することができます。
ライカに始まった35mmカメラの歴史は、レチナによって、多くの人々には「身近な存在としてのカメラ」となり、「カメラの大衆化」に大いに寄与しました。
人々の支持のもと、レチナは1934年から1969年までの実に35年間にわたって製造され、全部で34機種が発売されています。
私はクラカメを深く知るためにも、まずはレチナのことをある程度まで極めてみたいと思い、レチナの収集に取り組みました。その結果、全機種制覇とはいきませんでしたが、3機種(モデル#143,#148,#122)を除くすべての機種、台数にして全部で107機のRetinaを手にすることになりました。
これだけたくさんの機体に接してきた感想・・・・、それは、「レチナはやっぱりいい、飽きが来ない」ということです。「クラシックカメラの基本とエッセンス」がレチナには詰まっているように思えてなりません。
レチナ好きのこの私が、自信を持って皆さんにオススメしたいのが、ここで掲載したエクターUSA付きレチナI型(タイプ010)です。
少し詳しくこの機体のことを解説してみましょうね。
レチナ I 型(タイプ010)は、戦後直ぐの1946年から1949年にかけて製造されたコダック社戦後最初のカメラです。ちょうどドイツ敗戦直後の混乱期の生産にあたるため、カメラ各部を構成する主要パーツの調達には、当時、相当苦労があったと云われています。そのためか、この”タイプ010”は、付属するレンズや シャッターの種類がやたらと多く、レチナ・シリーズの中では特異な存在となっています。
そのような各種バリエーションの中で、このUSエクターレンズ付レチナI(#010)型は、歴代レチナの中でも傑作と云われるほどに評価が高いカメラです。
コダック社の最高級レンズは全てNY州ロチェスターの工場で生産され、その証としてシリアルナンバーの最初の2文字で製造年が特定できるようコード化されています。
シリアル・ナンバーの先頭文字と製造年(下2桁)の対応は次の通りです。
C=1, A=2, M=3, E=4, R=5, O=6, S=7, I=8, T=9, Y=0
今回出品のレンズシリアルは、その最初の2文字が”EO”ですから、”46”、すなわち1946年製であることが分かります。
(極めて個人的なことですが、この製造年と私の生まれ年が同じということが、このカメラに肩入れするもう一つの理由にもなっています。)
このエクター 3.5/50mm は3群4枚のテッサー変形タイプとなっています。明るく抜けの良い、シャープかつ繊細な描写は、現代でも通用する一級品のレンズと言ってよいでしょう。
また本機は、この著名で定評あるエクター・レンズ以外にも、軍艦部クロームメッキの素晴らしい仕上げ、構成部品個々の質感の高さ、無駄が無く美しいデザインなど、マニアを惹きつける様々な要素を揃えています。
実用機としてばかりでなく、コレクターズアイテムとしても是非手元に置きたい一品といえましょう。